科目名 |
遺伝学 |
クラス |
− |
授業の概要 |
親と子が似た性質(character)を示すことを私たちは古くから認知していました。この現象を遺伝(inheritance)と呼びます。それでは何故、子は親に似るのでしょうか?それは、親から子に遺伝子(gene)がある法則に従って伝えられるからです。メンデルが約140年前にこの法則を発見して以来、遺伝の仕組みとその物質的基盤を明らかにしようとする遺伝学(genetics)が発展してきました。20世紀後半以来の分子生物学の目覚しい進歩により、多くの生命現象に遺伝子が関与することが明らかになり、ヒトを含むいくつかの 生物については全遺伝情報(ゲノム)が解読されるに至っています。そして、抽象概念であった「遺伝子」は「DNAの塩基配列」という実体を得て、操作可能な対象物として捉えられるようになりました。生命科学の時代とよばれる21世紀を生きる我々は、「遺伝子組換え作物」や「遺伝子診断」や「再生医療」といった遺伝学に関連した諸問題に直面せざるを得ません。これらの諸問題を正しく理解するための基盤として、細胞から細胞へ、親から子へ遺伝子を受け継ぐ仕組みについて詳細に説明いたします。 |
授業の到達目標 |
高等学校の生物学の中で「難しい」といわれ、多くの生物嫌いの生徒を生み出しているのが「遺伝」の分野だと思います。遺伝学のわかりにくさは、「遺伝子」という抽象概念を取り扱うことに起因します。この講義では、抽象概念としての「遺伝子」の伝達が、実体のある物質としての染色体の振る舞いと相関することを詳しく解説し、「わかる遺伝学」を展開したいと思います。高校のときの生物で遺伝があまりよくわからなかった、分離比を丸暗記して乗り越えたという人たちの受講を歓迎します。複雑な現象が簡単な原理で説明され得ることの快感を味わってください。授業の進度は学生の理解度に合わせて調整します。 |
授業計画 |
1.はじめに:遺伝とは?遺伝学とは? 2.生物の階層性と細胞説 3.細胞の増えかた(体細胞分裂と減数分裂) 4.遺伝の法則:メンデルは何を見つけたのか? 5.様々な遺伝現象:複雑な現象も簡単な法則に支配されている 6.連鎖と組換え:兄弟の差を生み出す減数分裂の仕組み 7.遺伝子の所在:遺伝子の物質的基盤は何か? 8.遺伝子の発現:分子遺伝学の基礎、セントラルドグマ 9.突然変異:遺伝子突然変異と染色体突然変異 10.遺伝と環境:量的形質の遺伝学 11.生物の多様性と進化:集団の遺伝学 12.遺伝子操作 |
テキスト・参考書及び自学自習についての情報 |
高等学校・大学での生物学未履修者は高等学校生物の教科書・図説・参考書を利用して基礎知識の補充をしてください。 テキストは特に指定しません。授業の概要はプリントとして配布します。同時に、以下のサイトから公開します。 http://www.plant−genetics.kais.kyoto−u.ac.jp/Iden/index.htm 参考書としては、「遺伝学概説」(培風館)、「エッセンシャル遺伝学」(培風館)をお勧めします。とくに「遺伝学概説」は遺伝学をはじめて学ぶ米国大学生向けに書かれた教科書で、「遺伝学」のエッセンスが豊富な練習問題とともに提示されているのでお勧めです。 |
授業の形式 |
上記授業計画の項目を1回ないしは2回の講義で解説します。受講者の理解を助けるために、講義時間中に演習問題を解いてもらいます。 |
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) |
出席:10% 期末試験:90% 両者を総合して評価します。 出席は、不定期に提出してもらうホームワーク(演習問題)で確認します。 |
本授業に関する情報 |
「遺伝」の本質をマクロなレベルで理解してもらうことを目標とするため、この講義では遺伝現象の分子生物学的基盤については深く論じることをしません。従いまして、分子遺伝学、分子生理学に興味を持つ学生は関連する他の講義も受講されることをお勧めいたします。本講義は分子生物学各分野への良きイントロダクションとなることを目指します。 |
その他 |
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