科目情報
科目名 社会問題論 
クラス − 
授業の概要  地域住民組織として、町内会や部落会などとよばれる地域自治会ほど時代により評価の分かれる組織はないといえます。近代化や産業化に逆行するものだから封建的な残渣にすぎないという理解が一方で、環境・福祉・まちづくりなどの問題のフィールドを歩く現場の研究者からは、この小さなコミュニティの大切さを教えてくれる報告が目につくようになっています。
 本講義では、住民はどのように地域社会の意思決定に参加できるのか、現在、コミュニティはどのような方向に歩もうとしているのかなどの問いを考察したい。そして、都市化がコミュニティの意義をいっそう削ぎ落とすかのようでありながらも都市的生活様式の浸透がさまざまな問題を生み出しているなかで、その意義を発見し問直します。 
授業の到達目標  小さなコミュニティ(地域住民組織)の歴史と性格をふまえながら、地域社会の抱えている課題とそれに対する住民の取り組みについて考察します。その際、各地において、地域生活を活性化するためにさまざまな形態をとりながらなされてきた努力の一端に学びながら、議論を深めていくことにします。そのうえで、地域社会のカスタムや社会組織が時代と向き合って微修正を重ねている様子を理解し、否定的に見られてきた「小さなコミュニティ」なるものの可能性を手繰り寄せる力を養います。 
授業計画
内容
1イントロダクション 
2コミュニティとはなにか
 コミュニティとアソシエーション,概念の整理,具体的な像と現在の問題,コミュニティの構造 
3ワークショップ:市民社会におけるコミュニティの位置づけ(1) 
4私たちの暮らしを支えるコミュニティ(1)
 家族の機能とコミュニティ,付き合いのパターン,社会的オヤコ 
5私たちの暮らしを支えるコミュニティ(2)
 里親・里子,コミュニティに生きるということ 
6コミュニティが担う平凡教育(1)
 平凡教育,非凡教育,まちづくり協議会,全人教育と仲間教育 
7コミュニティが担う平凡教育(2)
 学校の年齢階梯と能力主義,娘と寝宿 
8コミュニティの場所性と共同性
 愛他的行為,互酬性,場所性,共同性,地域社会と人間関係の範囲 
9コミュニティの要としての地域自治会
 一般的特徴と歴史,地方自治制度,地域社会における地域自治会の比重,NPO法 
10地域自治会の評価と位置づけ(1)
 時代の要請としてのコミュニティ,近代化論,文化型論 
11地域社会の創造性:新しいコミュニティのあり方への注目(1)
 市町村合併,住民との協力,成熟社会,生活の質(QOL) 
12地域社会の創造性:新しいコミュニティのあり方への注目(2)
 住民意識の変化,住縁アソシエーション,コミュニティによる連携 
13ワークショップ:市民社会におけるコミュニティの位置づけ(2) 
14行為と規範:実践的規範を育む場としてのコミュニティ(1) 
15行為と規範:実践的規範を育む場としてのコミュニティ(2)/まとめ 
 
テキスト・参考書及び自学自習についての情報 テキストは特に指定しません。参考文献は講義中に適宜紹介します。 
授業の形式  講義。中間まとめとして、ワークショップ形式の授業を実施する予定。なお、履修している学生に対し事前に説明した上で内容を変更する場合があります。 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点)  定期試験と平常点(演習課題)により総合的に評価します。受講者の人数により試験を期末レポートに変更する場合もありますが、詳細については講義時に説明します。 
本授業に関する情報 なし 
その他  本授業では、コミュニティが実践的な社会規範をいかに育む場として機能してきたのかを検討しながら、「すべき/あるべき」論的な規範論ではなく、生活実践との関わりのなかでそれが生成されるものとして議論を深めます。