科目情報
科目名 心身の健康医学 
クラス − 
授業の概要 最初にストレスと心身の健康について説明し,次いで心の健康に触れる。殊に重要な精神現象についてわかりやすく解説をする。さらに代表的な心身の健康障害と児童青年期の精神障害を述べ,学校保健に関わる健康や行動上の問題に触れる。また最後にはサイコエデュケーション(心理教育,心の学習)の演習を通してアンガー・マネジメントを理解すると共に,児童生徒に対するサイコエデュケーションの実施方法などを学ぶ。 
授業の到達目標 学校における心身,殊に心の健康問題に関する医学的な基礎知識を理解して,児童生徒の心身の健康問題に対して教師として適切な対応ができることを目標とする。このため発達障害を含む児童生徒にみられる心身上の問題を医学的に解説して,学校における種々の危機的状態(例えば不登校,いじめ,暴力,自傷・自殺など)を取り扱う。 
授業計画
内容
1ストレスと心身反応:ストレスとストレス因,そしてリアクションの特徴を説明し,ストレスによって生じる適応低下と過剰適応,さらに神経症的反応と心身症的反応について説明する。またストレス因の種類について述べ,最後にストレス対処法として4C法を紹介する。 
2心身症:心身症を形成する背景要因について説明する。すなわち失感情言語症(アレキシチミア)や失体感言語症,器官選択性についてのべ,殊に器官劣等性や情動特異性による心身症のタイプを説明する。また心身相関における症候移動にふれ,心身および身心の背景要因について説明する。 
3精神病と神経症:精神病と神経症の相違を説明して,精神病に対する誤解や偏見についても述べる。殊に現実検討能力についてのべ,精神病症状の特徴,神経症の意義などを説明する。また精神病の病因として器質性と機能性を,神経症と人格障害の相違などを解説する。 
4欲動の障害(1)〜摂食障害:摂食障害の歴史を述べ,その過程で概念が形成されてきた神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)について述べる。また摂食障害の社会心理的な背景,自己身体像の異常,診断基準,家族病理などにもふれる。 
5欲動の障害(2)〜性障害と自己破壊行動:性行動に対応した分類や代表的な性障害の特徴について解説する。さらに自傷行為と自殺行動について説明する。自傷行為の持つ臨床的な意味や,自殺行動における直接動機や自殺準備状態(自殺危険因子)などについて説明し,自殺防止にもふれる。 
6感情の障害〜不安と抑うつ:不安・抑うつの特徴と臨床的意味の相違や力動精神医学的な解釈について説明する。次いで代表的な不安障害やうつ病性障害をとりあげ,生物学的な背景や対応上の注意点などを説明する。 
7思考の障害:思考障害の形式・様式・内容についてふれ,重要な思考障害,例えば強迫思考,抑うつ思考,妄想などについて解説する。また思考障害を呈する統合失調症や他の病態における思考障害について説明する。 
8睡眠の障害:ノンレム睡眠・レム睡眠など睡眠の特徴について説明し,睡眠に見られる異常を解説する。睡眠衛生や精神生理学的不眠,不眠症と過眠症,不登校の原因としても注目される不眠などを説明する。 
9心の発達と性格特性:フロイトとエリクソンの心理的発達について説明する。それぞれの発達段階の意味,固着と退行,成長に伴う行動障害や精神障害との関連などにふれる。人格障害の類型と特徴について解説する。 
10青年期の心性,家族,社会:戦後日本に行ける経済発展と家族崩壊,成績至上主義と新人類の個々人主義,などを解説し,家族の問題を解説する。この社会的背景の中で青年の心の問題を,低い自己評価という視点から解説する。 
11自閉症とアスペルガー障害:カナーとアスペルガーの自閉症概念を解説し,幼児自閉症とアスペルガー障害の特徴について述べる。その疫学的所見,臨床的な特徴,診断基準,生物学的背景など広い視点から両障害を比較検討し,その対応法のについてもふれる。 
12注意欠陥/多動性障害(AD/HD):ADHDの歴史的変遷を説明して,その病態的な特徴をのべる。また診断のための評価尺度や精神生理学的検査などを紹介して,ADHDの特徴を検討する。学校におけるADHD児に対する対応法,さらにメチルフェニデートなどの薬物療法の意義や副作用,学校における使用法,などを説明する。 
13いじめと行為障害:いじめが暴力行動の一つであることを認識して,いじめの持つ意味や対応を述べる。殊にADHDや行為障害など,いじめに関わる障害にも注意を払う必要がある。またいじめ防止のために実際的・具体的な対応方法を解説し,教師としてできることを考える。 
14不登校と適応障害:不登校を医学的な視点から検討する。その基本的な障害は適応障害であるが,不登校をおこす要因よりも不登校を遷延させる要因が重要であり,その要因について理解を進める。 
15心理教育「怒りとうまくつき合うために」:心理教育の中で「怒りとうまくつき合うために」を演習形式で行い,参加者が生徒役となってアンガーマネジメントの手法や考え方を理解できるように行う。このプログラムは小学校高学年〜高等学校まで対応できるため,心理教育の技能を習得することにも役立つ。 
 
テキスト・参考書及び自学自習についての情報  授業の最初に資料集を配布する。中村道彦著「パノラマ精神医学 映画に見る心の世界」(金芳堂,2,000円+税),並びに、中村道彦編著「心の学習(サイコエデュケーション)怒りとうまくつき合うために キレないためのコツを理解しよう!」(金芳堂,3,000円+税)を参考図書として利用されたい。 
授業の形式  
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 授業中に提示するテーマについてレポートを提出。レポートの評価は,優(≧80点,独創的),良(≧70点,説得力あり),可(≧60点,理解可),不可(≦60点)とする。
 
本授業に関する情報 特記事項無し 
その他