科目情報
科目名 マイノリティの人権に関する事例研究 
クラス − 
授業の概要 マイノリティの人権に関する事例として、アメリカ合衆国の歴史を考える。アメリカ合衆国は、建国以来、自由と民主主義を理想に掲げつつ、多くの異なる人種・民族によって成り立っていることにより、人種・民族間の緊張や対立を常に社会の中に抱えてきた。アメリカ社会における人種の意味を歴史的に考察するとともに、人種・ジェンダー・階級・セクシュアリティなどのカテゴリーが社会の政治・経済・社会的権力構造とどのように複合的に結び付いてきたのかを分析する。授業は講義、および、あらかじめ与えられたトピックについてのクラス発表、討論などで構成される。 
授業の到達目標 グローバル化が進み、複数文化が混在する日本の学校現場において、教員が文化的多様性に対処するためには教員のマイノリティに関する人権意識の涵養が不可欠である。また、国際社会の中で生きていく未来の世代にとって、異文化に対する受容性を養っておくことは重要であろう。本講義では、マイノリティの人権に対する考え方の歴史的変遷を、具体的事例を通して探る。 
授業計画
内容
1<オリエンテーション>授業の目的、到達目標および進め方に関するガイダンスを行う。教育者という観点から、人権意識の涵養が重要であることを再確認する。 
2<異文化接触と差別や排除の関係>マイノリティに対する差別や排除は、民族・文化・宗教・生活習慣の違いなどから生じるわけではなく、それらの違いが構造的な権力関係と結び付けられることによって起こることを理解する。 
3<アメリカの夢と悪夢>アメリカ合衆国の国是として、「自由」や「民主主義」、「アメリカン・ドリーム」といった概念がある。これらの神話が生み出されてきた歴史的背景について概観する。 
4<プランテーションと大西洋三角貿易>アメリカ南部が大西洋三角貿易の一端に組み込まれることによって、奴隷制大農園が発達していった過程を、労働の人種化という観点から理解する。 
5<人種隔離制度の完成>奴隷制度廃止後のアメリカ南部において、人種的階層構造を維持する方法として編み出された人種隔離制度について理解する。 
6<差別の構造と人種・ジェンダー関係>労働力再生産の仕組みとしての人種とジェンダーの関係が、奴隷制度下、および奴隷制廃止後の南部社会において、どのように構築されていったかを考察する。 
7<階級闘争と白人性の特権>工業化するにしたがい、移民労働者が大量に流入したアメリカ北部において、ヨーロッパ系移民にとっては、人種を超えた階級闘争と白人性の特権の追求の二つの道があった。移民が「白人」になっていった過程を概観する。 
8<領土拡張とラティーノ>メキシコとの戦争に勝利したアメリカは、西部に広大な領土と大量のラティーノ人口を抱えることになった。西部で繰り広げられた市民権をめぐる攻防を概観する。 
9<アジア系の排斥と包摂>アメリカの移民法の歴史はアジア系排斥の歴史と不可分に結びついている。アジア系排斥が合衆国の市民権および市民的自由に及ぼした影響を理解する。 
10<人種平等をめざす闘い(1)>奴隷身分から解放されたアフリカ系アメリカ人が生活向上と権利伸長をめざした方法は一つではなかった。B.T.ワシントンとW.E.B.デュボイス、およびM.L.キングとマルコムXの対立を軸に、異なる戦略の相克を探る。 
11<人種平等をめざす闘い(2)>それぞれ市民権から排除されたアジア系およびラティーノによる、市民権獲得および生活向上をめざしたさまざまな戦略を概観する。 
12<人種平等をめざす闘い(3)>土地と独自の生活様式を奪われた先住民たちの、権利およびアイデンティティ復活をめざした活動を概観する。 
13<多文化主義のジレンマ>多文化主義をめぐって繰り広げられる、さまざまな論争を取り上げ、アメリカのアイデンティティが抱える矛盾に光を当てる。 
14<人種化社会の克服は可能か?>まとめとして、人種化社会を克服する方法についてクラス討論を行う。 
15<マイノリティの人権と差別に関する教育>差別の構造的要因を踏まえたうえで、差別に関してどのような教育をおこなったらよいかについて、クラス討論を行う。 
 
テキスト・参考書及び自学自習についての情報 教科書:有賀夏紀・油井大三郎編『アメリカの歴史―テーマで読む多文化社会の夢と現実』(有斐閣、2003)、佐々木隆監修、和泉真澄・趙無名編著『アメリカ研究の理論と実践―多民族社会における文化のポリティクス』(世界思想社、2007) 
授業の形式  
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 出席およびクラスでの討論への参加(20%)、クラス発表(20%)、期末レポート(60%) 
本授業に関する情報 特記事項なし 
その他