科目情報
科目名 教員の職務と役割 
クラス b 
授業の概要 公教育の実施機関に勤務する主として公務員としての公立学校の教員が、どのような身分、権限、責任をもち、またその職務がいかなるものであるかについて、事例分析を通して明らかにする。特に今日の学校において教員が直面している職務上、勤務上の諸問題とそれへの対応について制度的な措置、個々の学校における具体策の実際を検討し、これからのありうる教員像をシミュレートする。 
授業の到達目標 教職に就く者、また現にその職にある者に対して、教職の本質的認識からその法的な位置づけ、また現在の様々な教職を巡る問題状況までを体系的に理解できるようになること。 
授業計画
内容
1全体概要・オリエンテーション:教師・教職の在り方についての全体構造を示し、本科目がどのような観点からどのような領域を扱うかを提起し、本科目の全体の構成や展開を示す。また事例研究についてのグループ編成を行い、発表の分担を決める。 
2教育の専門性と教職の専門職性:学校において教員によって担われる教育が高度化し、それに応じて教員の職務の専門職性が必要とされる場合に、その論理的な構造がいかなるものかを提示する。 
3学校教育の法制度と教員の身分・服務−法規解釈:公教育としての学校教育が法に基づいて実施され、それを担う教員もその身分・服務が法定されている。だが教員の教育権を中心に多様な法解釈がなされており、それを整理する。 
4学校教育の法制度と教員の身分・服務−判例分析:教員の身分・服務に関して生じた種々の係争事件を取り上げ、その裁判の判決を分析することによって公教育機関の構成員としての教員の在り方を検討する。 
5学校教育の法制度と教員の身分・服務−シミュレーション:教員が実際に職務遂行する上で関わる教育委員会、管理職、児童生徒、保護者、地域社会等との関係において、いかなる法規範に基づくべきかを具体的な問題に則してシュミレートする。 
6教育の中立性と教員の職務規範−事例分析:教員に求められる政治的、宗教的な中立性について、それが具体的に問われたこれまでの事例を分析することによって検討し、どのような職務規範が求められているかを考察する。 
7教員人事のシステムと実際−事例分析:教員の採用や異動、また分限や懲戒について、それらがどのようなシステムとなっているのかを明らかにし、その具体的な問題を取り上げて事例分析を行う。 
8教員の「問題行動」と危機管理−事例分析:教員は教育公務員として、違法行為は元より種々の社会規範からの逸脱が問題視される。教員のどのような行動が学校にとっていかなる問題とされるのか、またその防止と処理はいかにあるべきかの検討を事例の分析を通して行う。 
9「指導力不足教員」と学校の指導体制−事例分析:いわゆる「指導力不足教員」は、教員の絶対的力量の問題としてだけではなく、校内体制や保護者や地域との連携の在り方に関わっている。実際の事例を通してその問題構造を分析し、その防止や解決に向けた学校の指導体制の在り方を検討する。 
10教職務実態とメンタルヘルス−事例分析:多忙化や職務の複雑化により精神的疾患やバーンアウトする教員が増加する状況を事例を通して分析し、そのメンタルヘルスを図るための職務遂行の合理化や人間関係の円滑化を検討する。 
11教員と保護者・地域社会との関係構築−事例分析:学校の自律化、開かれた学校づくりが課題とされる中で、情報公開や参加、評価という関係を機軸に教員が保護者・地域社会とどのような関係を構築していくべきかについて、事例の分析を通して検討する。 
12教員の職務員評価−事例分析:学校改善は教員の職務改善を通してのみ可能であり、教員の職務遂行評価としての教員評価が学校改善のための学校評価の中核に位置づけられる構造を示し、教員の客観的な職務分析を通した教員評価の在り方を事例の検討を通して行う。 
13校内研修と職能成長−事例分析:教員の効果的な職能成長が<on job training>によること、そして明確な課題設定と組織体制をもって計画的に校内研修が実施されることが必要なことを具体的な校内研修の事例分析を通して検討する。 
14まとめ:各グループの事例研究発表の相互の関係を明らかにする形で総括し、これからの学校教育と教員の在り方について受講生が討議する。 
15受講生各自がまとめたレポートを発表−報告し、担当教員のコメントを踏まえ、本科目全体についての受講生個々が得られた成果について確認する。 
 
テキスト・参考書 テキストはなし。参考文献として、山崎準二、辻野けんま、榊原禎宏『「考える教師」−省察、創造、実践する教師』学文社、2012年、今津孝次郎『教師が育つ条件』岩波書店、2012年。
その他、授業において適宜紹介する。 
自学自習についての情報 事前に、参考文献等で授業内容について予習をしておくこと。発表担当者は、1週間前までに発表内容について相談に来ること。
事後に、授業内容について復習し、教員の責任という観点から自分の考えをまとめること。 
授業の形式 講義およびグループ別に担当する課題の発表と議論からなる。 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 質問や発言等の授業参加(30%)、発表と議論の組織(30%)、終了時のレポート(40%)  
その他