科目情報
科目名 情意発達の心理学特講 
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授業の概要  人間の行動は4つの要素で説明可能である。生命進化の系統発生要素,受精直後から始まる後成発生と個体発生の各要素,それに誕生後の個人を取り巻く環境要素である。人間の行動にはこれら4つの要素が輻輳的,かつ交互作用的に働くため,行動をつくりだす心の「何?」が見えにくくなっている。そこで本論では,進化心理学,行動生態学,脳解剖学,感情心理学,発達心理学などがそれぞれに見つけたevidenceに基づいてこれを説明し,総合的に論じる。また,子どもたちの認知や社会性の発達を論じながら,親子関係やアタッチメント,内的ワーキングモデルと社会的行動,ミラーニューロンやミメシス理論,あるいは「心の理論」などと発達障害との因果関係を考え,なぜ今,「キレ」る子どもや発達障害の子どもが増加しているのか,その理由に迫りたい。 
授業の到達目標 1.人類進化のあらましと言葉や感情の発達を学び,個性の由来を探る。
2.遺伝と環境の相互作用について理解し,個性の発達を学ぶ。
3.社会性の発達を保証する愛着形成の様々な理論を学び,親子関係を考える。
4.愛着不全に起因する障害や素行障害,反社会性パーソナリティ障害など,現代社会の病理現象を理解する。 
授業計画
内容
1社会・情動発達の基礎:進化心理学から見たヒトの行動の成り立ち 
2情動の役割と発達:情動の発達とその神経生理,および脳機能概論 
3胎児期心理学:後成発生(Epigenetic)過程に影響を与える環境の要素と心の配線 
4新生児期心理学:個体発達と子どもの気質,母子相互作用と情動調整 
5自己の発達と社会・情動:ブロンフェンブレンナー・モデルにみる生態学的環境の影響 
6乳幼児の認知発達:モジュール理論とイディオ・サバン 
7「心の理論」と他者理解:相手の気持ちや心の理解,およびその支援 
8異常行動の動物モデル:ハーローの代理母親実験が明らかにしたもの 
9内的作業モデルとボウルビーの愛着理論:情動アセスメントのための理論的視点 
10愛着の実験的研究:エインズワースのSSPと母子愛着,およびそのアセスメント 
11愛着理論の問題点:発達のダイナミック・モデル 
12関係性の病理と支援:愛着障害と児童虐待,その介入について 
13前頭葉機能障害:その精神病理 
14自閉症スペクトラム障害にみる情動・感情の支援:その歪みと他者関係形成への支援 
15社会的関係発達不全:反社会性パーソナリティ障害,素行障害,反抗挑戦性障害およびその支援 
 
テキスト・参考書 特にテキストは定めないが、以下を自学のための参考書とする。

須田治・別府哲「社会・情動発達とその支援」ミネルヴァ書房
藤永保・森永良子「子育ての発達心理学」(実践子育て学講座I)大修館書店
高橋悦二郎「子育ての保健学」(実践子育て学講座II)同
大日向雅美・荘厳舜哉「子育ての環境学」(実践子育て学講座III)同 
自学自習についての情報 臨床発達心理士受験希望者は指定参考図書を熟読しておくこと。 
授業の形式 基本的に講義形式とするが、部分的に参加者の意見発表を求めることもある。 
アクティブラーニングに関する情報  
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 小テスト20%+期末テスト80% 
その他(授業アンケートのコメント含む) 特記事項なし