科目情報
科目名 分子免疫学 
担当教員 西村 泰光,西岡 敬介 
クラス − 
授業の概要 「ワクチンってなに?どうして予防接種をするのですか?」「花粉症って?」「乳酸菌って?善玉菌ってどういうこと?」もしもこんな質問がきたら、あなたはどうしますか?ごまかすことなく答えることができますか?子供たちにとって理科の教師は身近な科学者です。それらの話題は全て「免疫学」で説明できます。免疫学は18世紀のEdward Jennerによる種痘実験による“免疫”の実証を端緒に、北里柴三郎とEmil Adolf von Behringによるantitoxin(抗体)の発見、lya Ilyich Mechnikovによる貪食細胞(マクロファージ)の発見と続き、その体系的学問として大きく発展しました。今日では日常のメディアでも免疫の話題が登場し、2018年に免疫チェックポイント阻害薬の開発に尽力された本庄佑氏にノーベル生理学・医学賞が贈られたことは記憶に新しいところです。みなさんが教師となる日には益々メディアに免疫学が溢れていることでしょう。この授業では、みなさんが免疫の本質を理解できるように免疫系について細胞/分子レベルで概説します。免疫系が認識する非自己と自己、各免疫担当細胞が果たす役割、相互作用の意味、作用機序、疾患の裏側にある免疫機能の効果と破綻、など幅広く学習します。理科系の学生は勿論、他分野の学生も、この機会に是非免疫学を学び、免疫機能の大胆さ繊細さから、自らの生命観を一新し、子供たちに免疫の不思議を説明できるチカラを身につけて欲しい。 
授業の到達目標 以下の事柄について説明できることを到達目標とする。
・個体(生命)の維持において免疫系が果たす役割
・免疫系が異物を排除し自己を維持する仕組み
・免疫組織/免疫細胞の機能・役割、またその差違
・免疫細胞の相互作用、特に獲得免疫において
・免疫機能の破綻と疾患の関わり
その他、免疫機能について幅広く学習することを目指す。 
授業計画
内容
1免疫系とは何か? -自己と非自己, 個体を維持し生命を形作る- 
2免疫系の進化とその構成 -免疫器官, 免疫細胞- 
3自然免疫 -補体, 好中球, マクロファージ, NK細胞-  
4獲得免疫 -抗体, B細胞, T細胞- 
5細胞表面免疫グロブリンと抗体 
6T細胞の抗原認識 -T細胞, TCR, 抗原提示細胞, MHC, TAP, cross presentation, proteasome-  
7B細胞の分化 -骨髄, 遺伝子再構成, 受容体編集 
8T細胞の分化 -胸腺, 正と負の選択-  
9T細胞の活性化, 増殖, 分化 -補助刺激分子, サイトカイン, cross priming- 
10T細胞の機能 -感染防御, 抗腫瘍免疫, Tヘルパー細胞亜集団- 
11B細胞による抗体産生 -TI/TD抗原, クラススイッチ, IgM, IgG, 親和性成熟- 
12アレルギーと自己免疫疾患 
13慢性炎症と線維化  
14研究の話題1 -老化と免疫機能-  
15研究の話題2 -粉塵曝露と癌・自己免疫疾患- 
 
テキスト・参考書 テキストは使用しない。スライド供覧またはプリント資料配付によって授業を進める。以下の図書を参考書として予習復習することを奨励する。
・エッセンシャル免疫学第2版, Peter Parham編, 笹月健彦監訳
・Janeway's Immunobiology, Murphy K, Travers P, Walport M, eds, Garland Science 
自学自習についての情報 集中講義であるので、講義期間終了後に十分な復習時間を充てて、学習した内容を改めて整理するなどしましょう。 
授業の形式 講義形式。 
アクティブラーニングに関する情報 履修前の相談、授業内容への質問など、いつでもwelcomeです。下の西村のメールアドレスに投げて下さい。nishimurayasu@gmail.com 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 講義後に提出を求めるレポート課題により評価する。 
その他(授業アンケートへのコメント含む) 講義の内容について自分のノート読み直し復習すること。参考書があれば、該当する章を読み直すことで更に理解が深まるだろう。理科系の学生だけでなく、生物学、自然科学に興味のある幅広い学生の受講を期待する。 
担当講師についての情報(実務経験) 西村泰光:京都教育大学理学科にて細川友秀教授(現学長)に師事し免疫学を修得。京都大学医学研究科にて博士取得後、兵庫医科大学助手を経て、川崎医科大学衛生学准教授に至る(現在)。免疫老化および環境因子(主に粉じん曝露)の免疫機能影響についての研究に取り組み、日本衛生学会奨励賞(平成24年)上原記念生命科学財団 研究助成(平成29年)など授賞多数。平成24年より京都教育大学での「分子免疫学」、H25年より早稲田大学においても「免疫学」を、またH28年からは川崎医療福祉大学において「予防医学」内の免疫学領域を担当しており、分かりやすい免疫学の講義の豊富な経験を有する。