科目情報
科目名 視覚障害教育総論 
クラス − 
授業の概要  特別支援教育にとって大切な、社会全体が障害を適切に理解するという「障害理解」に関して内容、あり方、障害者観、及び根底となる「人間理解」を認識し、視覚の生理・病理、視覚障害の基礎と意味によって視覚障害の基本(概念)を学習する。その後、視覚障害を主体とする特別支援教育とリハビリテーション、視覚障害児・者の心理、指導法を含む自立活動の総論、及び各論として歩行(定位と移動)・コミュニケーション(点字・パソコン等)・日常生活動作(ADL;身辺管理等)について全盲と弱視(ロービジョン)を対象として解説する。加えて、疑似障害体験、障害理解教育と社会啓発についてもふれる。
 本学では視覚障害領域の特別支援学校免許状取得が主目的ではなく、視覚障害教育に関しては「概論」が対象である。しかし、視覚特別支援学校以外でも視覚障害児を指導する可能性は十分考えられるため授業だけでは時間的、内容的に不十分である。そこで、「視覚障害児のため」時間外の自学自習に多くの時間を当てて、大変ではあるが配布するテキストの補助資料を精読することでその不足分を補ってほしい。なお、本授業では視覚障害に特化するだけでなく、知的障害、発達障害など他の障害、特別支援教育、総合的な教育のあり方、障害理解教育や社会啓発の背景となる社会様相や変遷・歴史にも適宜ふれる。
 
授業の到達目標 1.障害理解(障害児・者を含む社会全体が障害児・者とその障害を適切に理解すること、障害受容とは相違)、その基礎としての人間理解を認識する。
2.視覚の生理・病理(視覚器の構造、視覚検査、視機能異常、眼疾患)、及び視覚障害の概念(基礎、誤解、意味)を学習する。
3.障害告知、障害受容(家族を含む障害児・者が自身の障害を適切に受容すること、障害理解とは相違)、リハへの動機付けといった視覚障害児・者の心理リハビリテーションを習得する。
4.視覚障害の教育とリハビリテーションの概要を把握する。
5.自立活動の概要と指導法、及び歩行(定位と移動)、コミュニケーション(点字・パソコン等)・日常生活動作(ADL;身辺管理等)の3つが主体の社会適応訓練(基礎的能力・社会適応能力)の概要と指導を弱視(ロービジョン)を含めて学習する。
6.ファミリアリゼーション(未知の既知化)の重要性と必要性を理解する。
7.誤って実施されることが多い疑似障害体験の適正な内容・あり方、障害理解教育や社会啓発、社会の障害者観について学ぶ。
8.自学自習をも活用して視覚障害児を指導する力を養う。
 
授業計画 1.オリエンテーション・社会と障害者…テキスト第12章、配布資料
2.障害理解・障害の分類(ICF)…第12章、第1章、配布資料
3.視覚の生理・病理1:視覚器の構造・視覚検査…第1章
4.視覚の生理・病理2:視機能異常・症候・疾患…第1章
5.視覚障害の基礎事項・誤解…第1章、配布資料
6.視覚障害の意味…第1章、配布資料
7.視覚障害の教育とリハビリテーション1:リハ…第2章、配布資料
8.視覚障害の教育とリハビリテーション2:教育と課題…第2章、配布資料
9.視覚障害児・者の心理(心理リハビリテーションと心的ケア)…第3章
10.自立活動と生活訓練1:自立活動の理念と社会適応訓練…第4章、配布資料
11.自立活動と生活訓練2:基礎的能力…第4章、配布資料
12.自立活動と生活訓練3:指導の実際と指導法…第4章、第7章、配布資料
13.歩行(定位と移動)とその指導…第5章、第9章、第10章、配布資料
14.コミュニケーション・ADLとその指導…第6章、配布資料
15.弱視児・者の指導と疑似障害体験…第8章、第11章、第12章、配布資料
 
テキスト・参考書  テキストは、「視覚障害児・者の理解と支援[新版]」(芝田裕一著、北大路書房)を使用する。テキストは初回の授業から使用するので、必ず購入し、持参すること。
以下の参考書の中で兵庫教育大学研究紀要は、兵庫教育大学ホームページ:附属図書館・各センター(附属図書館:関連リンク:学術情報リポジトリHEART:学校教育研究科:a.2紀要:兵庫教育大学研究紀要)から入手可である。
芝田裕一(2010)視覚障害児・者の歩行指導−特別支援教育からリハビリテーションまで−.北大路書房.
芝田裕一(2010)障害理解教育及び社会啓発のための障害に関する考察.兵庫教育大学研究紀要,37,25-34.
芝田裕一(2013)人間理解を基礎とする障害理解教育のあり方.兵庫教育大学研究紀要,43,25-36.
柘植雅義・渡部匡隆・二宮信一・納富恵子編著(2014)はじめての特別支援教育〔改訂版〕−教職を目指す大学生のために−.有斐閣.
その他の参考書等についてはその都度、指示する。 
自学自習についての情報 @前もって教育の基礎を習得しておくことが望ましい。
A視覚障害に関する領域には誤解されている部分や難解な部分があるため、高い集中力をもって授業に臨んでほしい。
B授業に意欲をもって積極的に取り組むこと。
C講義内容について「理解」(分かる)、「記憶」(覚える)、「思考」(考える)を大切にすること。
D授業に関連するテキストの章を各授業前に読んで理解しておき、また事後に復習によって習得しておくこと。
E授業でふれられなかったテキスト・配付資料の箇所は自習として読んでおくこと。



 
授業の形式 講義 
アクティブラーニングに関する情報  本授業は、視覚障害教育の基礎・概要が基本で内容的に非常に多くのものがあるため、講義が主体とならざるを得ず、アクティブラーニングによる授業形態をとることは時間的には難しい。しかしながら、授業中の質問は随時受け付ける、こちらから質問をするなどによってアクティブラーニング的な視点も含める。
 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) @授業に対する積極性(30%)、レポート・筆記試験(70%)によって評価する。本授業は障害児・健常児にとって意義のある教員の養成が目的であるため評価はシビアに行う。
A授業に対する積極性は重要視されるため、集中力を欠くことのないようにすること。
B期末(定期)試験はテキスト、資料等の持ち込みはなしで実施する。

 
その他(授業アンケートへのコメント含む) @本授業は学校教育・特別支援教育の基礎を習得していることを前提に進める。
Aパワーポイントを使用することによって理解促進の一助とする。
B実習等で欠席する場合は前もってその理由を明記し提出すること(遅刻、早退も同様)。
C授業では多くの内容を取り上げるため、補助資料を配付し、また授業進度はやや速い。
D授業でふれられなかったテキスト・配付資料の箇所は自習として読んでおくこと。
E分かりづらいことや聞き漏らしたこと等質問は授業中随時受け付ける。
F授業中に質問された場合は積極的に発表すること。
G授業中の離席は可能な限り控え、どうしても離席する場合は申し出ること。
H授業アンケートに関して:授業改善に反映できる意見等を望む。

 
担当講師についての情報(実務経験)  視覚障害特別支援学校の教諭として長らく勤務。教科は美術、自立活動を主として担当。また、盲と弱視および単一障害児童生徒と重複障害児童生徒のどちらの教育にも携わってきた。大学での教員養成、視覚障害リハビリテーションセンターでの講義も担当してきている。詳細は授業中にもふれる。