科目情報
科目名 カリキュラム概論 
クラス − 
授業の概要  第1?5講義は学習科学についての知見を取り上げる。ヒトの学習のありようを認知科学と社会文化的研究の研究成果から概観する。ここでは学習科学を「認知科学」「状況的学習論」「学習デザイン」の3つの観点から、新しい学習理論の特徴と背景となる諸科学とその相互連関を概観し、学校教育の場での実践について考察する。
 第6?10講義は、学習指導要領の基本構造やカリキュラム編成の基本原理について解説し、学校教育全体の中でカリキュラムを考える視野を与える。また、現在着目されている新しい学校教育内容領域の基本的な考え方やカリキュラム開発上の課題について講義し、学校の実態に応じた特色あるカリキュラムを開発していくための基本的な力量形成を目指す。
 第10?15講義は授業評価を含むカリキュラム評価とマネージメントの意義と方法を理解する。カリキュラムとその実践である授業の評価に関する理論と方法を歴史的な経緯を含めて理解し、カリキュラムと授業の評価に関する基本的な知識を獲得する。 
授業の到達目標 学習科学に関しては、以下が到達目標である。
(1)学習科学の学問的基盤を理解し、学習科学の研究の方向性が理解できる。
(2)学習科学の3つの柱である「認知科学」「状況的学習論」「学習デザイン」の概要と相互の関係が理解できる。
(3)授業実践に生かすため学習科学について学びを深めようとする。
カリキュラム構成に関しては、以下が到達目標である。
(1)学習指導要領の基本構造やカリキュラム編成の基本原理・類型・構造を理解し、学校教育全体の中でカリキュラムを考える視野を獲得する。
(2)総合的な学習の時間を核として、学校の実態に応じた特色あるカリキュラムを開発していくための基本的な知識の得る。
カリキュラム評価に関しては、以下が到達目標である。
(1)カリキュラムとその実践である授業の評価に関する理論と方法を歴史的な経緯を含めて理解する。
(2)カリキュラムと授業の評価に関する基本的な知識を得る。 
授業計画
内容
1第1講義―「学習科学」とは(担当:滝川国芳)
 「構成主義」を出発点とし1990年代に誕生した「学習科学(Learning Sciences)」の学問的基盤と基本概念を概観し、その研究課題を理解する。
  ピアジェとヴィゴツキー   脳科学と学習    認知科学と情報工学
  社会文化的研究と学習   学習のプロセスに関する新たな知見とデザイン科学 
2第2講義―「コンストラクティヴィスム」から「コンストラクショニズム」へ(担当:滝川)
 「構成主義」の基本について理解する。構成主義を出発点とした「認知科学」の特色を基盤となる認知心理学と情報工学の研究から理解する。認知主義と「コンストラクショニズム」の違いの理解を通じて学習の社会的側面や学習文化の重要性に気づく。
  シェマ(スキーマ)  素朴概念・誤概念  再構築  知識構造  
  熟達化と省察  先行オルガナイザー  社会文化的研究  
3第3講義―「状況的学習論」(担当:滝川)
 学習科学の大きな成果である知識を「状況的」に捉えることの概略を理解する。学習を知識の伝達と習得ではない、正真性をもった活動となる実践のための授業デザインの重要性に気づく。
 文脈性 協働的活動  分散認知  相互作用的アプローチから状況的アプローチ 
 伝統的徒弟制度から認知的徒弟制度  学習者中心のデザイン  
4第4講義―「学習環境デザイン」(担当:滝川)
 学習者の学びをもたらす学習活動・学習指導過程を「学習環境のデザイン」と捉えることの意味を理解する。「学習環境デザイン」についての基本的ポイントを理解する。
 足場掛け  外化と明示化  省察  学習コミュニティー  発達の最近接領域
 ICT  コンピュータと教育ソフトウエアー 
5第5講義―「学習科学」と学校教育(担当:滝川)
 これまでの講義を基に、学習科学の知見を授業実践に生かす方向性について考える。
 教育目標とカリキュラム編制  学習内容と学習方法  アクティブ・ラーニング 
6第6講義―カリキュラムとは何か?(担当:徳永俊太)
 カリキュラムが備える基本的な性格について講義する。そのうえで、カリキュラムの
編成主体は誰なのか(国家、学校、教師)を考察する。 
7第7講義−カリキュラムの基本構造と編成原理 (担当:徳永)
 学習指導要領の史的展開を踏まえつつ、現在の学習指導要領の基本的構造や編成の原理、学校におけるカリキュラム開発について解説する。そして、特色ある学校づくり・特色あるカリキュラム開発の求められる背景・課題について理解を深める。 
8第8講義−カリキュラム編成の基本的視点と手続き (担当:徳永)
 学校に基礎を置くカリキュラム開発にむけて、カリキュラム編成原理、カリキュラムの類型、カリキュラムの要素、カリキュラム編成の基本的視点や手続き、課題などについての解説を行う。 
9第9講義?総合的な学習の時間を核としたカリキュラム開発(担当:徳永)
 学校に基礎を置くカリキュラム開発の事例として、ここでは「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発を取り上げる。カリキュラム編成の基本的な考え方、教育内容開発の方法、学校教育全体の中での位置づけなどを解説するとともに、「総合的な学習の時間」を核として特色あるカリキュラムを開発している事例について、多角的に検討し、その実際と課題を明らかにしていく。 
10第10講義?総合的な学習の時間の学び(担当:徳永)
 「総合的な学習の時間」は、学習者を知的欲求に満ちた能動的な存在と見なし、学習者の課題追究の道筋にそって必然的な学びをデザインしていこうとするものである。それが実現したときに、どのように知の総合化が図られ、主体的な問題解決の態度が育まれるのか明らかにする。 
11第11講義―教育評価とは何か(担当:北原?也)
 カリキュラム評価の基礎である教育評価について考える。教育評価に大きな影響を与えている学力調査、学力の水準、学力格差、PISA調査および学習意欲の評価等について検討する。 
12第12講義―教育評価の歴史的展開(担当:北原)
 教育評価の歴史的展開をタイラー原理、ブルーム理論、到達度評価、目標に準拠した評価、真正性問題等を検討する。 
13第13講義―カリキュラム評価の基礎としてのカリキュラム編成原理(担当:北原)
 評価の視点からカリキュラムの編成原理を検討する。系統主義と経験主義、工学的アプローチと羅生門アプローチ、スコープとシークエンス、クロスカリキュラム等を考る。 
14第14講義―カリキュラム評価と授業分析(担当:北原)
 最近の授業分析の現状を消化し、現在の教育評価で何が問題なのかを検討する。べラック、エスノメソドロジー、メーハン、ディスコース分析、シュルツの教科ディシプリン等を取り上げる。 
15第15講義―通知表をめぐって(担当:北原)
 最終講義では、最も重要な評価の課題である通知表を取り上げる。1969年の通知表論争、オール3論争、通知表の観点等をカリキュラムや教師の視点から検討する。 
 
テキスト・参考書 参考書:
田中耕治編「よくわかる教育課程 第2版」ミネルヴァ書房 2018刊
R.K.ソーヤー 編 「学習科学ハンドブック」 培風館 2009刊
OECD教育研究革新センター 編著 「脳からみた学習」 明石書店 2010刊
高垣まゆみ 編著 「授業デザインの最前線」 北大路書房 2005刊
J・レイヴ、E・ヴェンガー 著 「状況に埋め込まれた学習」 産業図書 1993刊
田島信元 「共同行為としての学習・発達」 金子書房  2003刊 
自学自習についての情報 内容は多岐にわたるが、これまでに学習した内容も出てくると思われるので、復習することを推奨する。 
授業の形式 担当教員によるオムニバス形式。基本的には講義が中心になる。 
アクティブラーニングに関する情報 授業中に、3人グループ等,小集団での話し合い活動を行う。 集団の編成の仕方は,授業ごとに指示する。 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) レポート(小テストを含む)(70%)、授業への参加状況(30%) 
その他(授業アンケートへのコメント含む) 授業アンケートで、それぞれの項目のつながりを明確にしてほしいという要望があったので、教員間で使う語句等のすりあわせを行う。 
担当講師についての情報(実務経験)