科目情報
科目名 国文学特講 
クラス − 
授業の概要 本講義は、日本近現代文学を通じて様々な〈怒り〉の様相を見ることを目的とする。これまで、文学作品は様々な〈怒り」を描いてきた。それは、日常の些末な事象への憤りから国家に対する憤懣まで、様々な事由によって生起し、これまた様々な形式を以て表現されていく。この〈怒り〉について、各作品を検討する中でなぜ登場人物は怒りを抱いたのか、どのようにしてその感情は消化されたのか/さらなる怒りへと発展していったのか、を考えることで、これまでネガティブな感情とみなされてきた〈怒り〉を見つめ直すことを目指したい。 
授業の到達目標 1.近現代日本文学における様々な怒りの根源について理解することができる。
2.取り上げる文学作品を通じて近現代日本を生きた/る人間の生について考察することができる。
3.文学作品を文化的背景を踏まえた解釈を行い、自らの問題と併せ取りまとめることができる。 
授業計画
内容
1ガイダンス
(授業の進め方、目的について) 
2日常への怒り:労働@「労働の価値」
佐多稲子「キャラメル工場から」 
3日常への怒り:労働A「労働を強いるもの」
笙野頼子「なにもしてない」 
4社会構造への怒り:ジェンダー@「身体暴力」
平林たい子「殴る」 
5社会構造への怒り:ジェンダーA「〈知〉の暴力」
姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」 
6社会構造への怒り:権力
中野重治「交番前」 
7社会構造への怒り:学校
重松清「ナイフ」 
8社会構造への怒り:戦争
伊藤計劃「The Indifference Engine」 
9怒りの具現化:実際運動と言語運動
星野智幸「在日ヲロシヤ人の悲劇」 
10怒りの具現化:言語表現と〈ノイズ〉
目取真俊「郡蝶の木」 
11怒りを表現する場:沖縄と戦争記憶
又吉栄喜「ジョージが射殺した猪」 
12怒りを表現する場:沖縄の怒り
目取真俊「虹の鳥」 
13怒りに潜在する問題:声を奪われる者
李龍徳「あなたが私を竹槍で突き殺す前に」 
14怒りに潜在する問題:解消できない怒り
後藤みな子「炭塵のふる町」 
15総括 
 
テキスト・参考書 【テキスト】授業で扱う小説は教員が配布するが、興味を持った作品については購入し精読してほしい。
【参考書】 参考書についても各授業にて適宜紹介するが、講義に出席するにあたって以下のものは読んでいてほしい。
・ハンナ・アーレント『暴力について―共和国の危機』(みすず書房、1973年、Kindle版あり)
・ジュディス・バトラー『触発する言葉――言語・権力・行為体』(岩波書店、2004年)
・目取真俊『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送協会出版、2005年) 
自学自習についての情報 作品は事前に通読しておくことを求める。仮に読めないのであれば、作品情報は事前に理解しておくこと。 
授業の形式 テキスト解釈を中心とするが、適宜内容に関してグループディスカッションを行う。受講者は積極的に参加し、発言することが求められる。 
アクティブラーニングに関する情報 授業中にグループ・ディスカッションや意見交換を行う。
能動的、主体的な学習を出席者には求める。
なお、ディスカッション、小レポートの執筆、テキストの配布、授業内資料の閲覧などでパソコン、タブレット、スマートフォンを使用する。
(紙資料、直筆での小レポートの執筆を希望する学生は、事前に相談してもらえれば対処します。) 
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) 授業参加(ディスカッションの参加度、小レポートの提出)(60%)
学期末レポート(40%)
詳細については、初回授業内で説明するので、可能な限り出席のこと。 
その他(授業アンケートへのコメント含む) 授業で扱うテキストは、時には皆さんに嫌な読後感しか与えないかもしれません。ただ、文学作品は言葉や行動にできない「何か」を形にする手段として存在し、現在もなおその「何か」を表現したい、読み取りたい人々によって継続しています。「嫌な気持ちになった」「二度と読みたくない」「なぜこんなものを読ませたんだ」でも構いません。みなさんがテキストを通読しどのような読後感を得たのか、いかに自分につながる問題として考えたのか、自分ならどういった行動ができるか等々、是非ディスカッションや小レポートを通じてフィードバックしてください。 
担当講師についての情報(実務経験)