科目情報
科目名 読書と豊かな人間性 
クラス − 
授業の概要 情報化社会において、「読書」の解釈は拡大されてきている。伝統的な書物(紙媒体)を読むことを「読書」とみなした時代から、web上の情報(電子媒体)を読むことをも「読書」とみなす時代へという歴史的な変遷を解説する。
並行して、戦前・戦後の日本の学校教育における「読書」と「指導」の関係性の変遷を、海外との関係なども含めて説明する。
学術的な観点では各分野の研究成果からの理論を概説し、実務的な観点では学校教育現場で実践するための方法を実物・実演などで例示し、受講生も一部を体験することで技術の習得をはかる。
現在、教育現場で起こっている事例を豊富に盛り込みながら紹介したあとに、再び理論を確認する。(「なんのために、それをするのか」の意識化)
 
授業の到達目標 ・「生きる力」を構成する「豊かな人間性」を備えた児童生徒を育成するために、情報リテラシー育成を含む様々な場面での読書の理念を理解することができる。

・教育課程の展開に寄与し、児童生徒の健全な教養を育成するという学校図書館の目的にそって、「読書センター」「学習センター」「情報センター」の3つの使命を遂行する過程で、司書教諭として児童生徒の発達段階に応じた読書活動を推し進めるために、「児童生徒」と「読書資料」について知り、2つを結びつける方法を習得することができる。

・本科目は、国家資格である学校図書館司書教諭資格取得を前提としているという側面があるため、理論と実践を往還しながら、両者を意識的に結びつけることが重要となることから、講義と演習において知識と技術を関連づけた実践能力を身につける。
 
授業計画
内容
1イントロダクション 学校教育における読書の意義と目的:読書とは、豊かな人間性とは
 
2読書概念と読書教育の歴史的変遷
 
3児童・生徒の発達段階や特性(特別支援やグローバル化を含む)に応じた読書:発達心理学の系譜
 
4児童・生徒向け読書資料の種類と各校種での活用1(絵本・児童文学・ヤングアダルト資料など)
 
5児童・生徒向け読書資料の種類と各校種での活用2(ノンフィクション・逐次刊行物・漫画など)
 
6児童・生徒向け読書資料の種類と各校種での活用3(知識の本・レファレンスブックなど)
 
7読書資料の選択・収集・整理・保存などの読書環境の整備(「図書館の自由に関する宣言」の理解)
 
8読書活動の方法1(ストーリーテリング・読み語り・読みあいなど)
 
9読書活動の方法2(ブックトーク・ビブリオバトル・アニマシオンなど)
 
10読書活動の方法3 実技演習
 
11読書関連行事の企画・運営(読書まつり・選書会・読書感想文関連など)
 
12学習指導における読書の様相(各教科・教科横断型、探究学習、図書の時間の授業を含む)
 
13家庭・地域・公共図書館等との連携、そして生涯学習への道のり
 
14パフォーマンス課題プレゼンテーション
 
15学校図書館の展開と課題:読書と心の教育とは
 
 
テキスト・参考書 テキスト: 使用しない。
参考書:
・キャサリン・シェルドリック・ロス, リン(E.F.)マッケクニー, ポーレット・M.ロスバウアー著 ; 川崎佳代子, 川崎良孝訳 『読書と読者 : 読書、図書館、コミュニティについての研究成果』 (京都大学図書館情報学研究会) ,2009年. 
・同上者著 ; 川崎良孝、山ア沙織、川崎佳代子訳『続・読書と読者:読書、図書館、コミュニティについての研究成果』, 京都図書館情報学研究会, 2019年.
・相関図書館学方法論研究会(川崎良孝・吉田右子)編著 ; スバンヒルド・オーボ [ほか] 著・訳 『トポスとしての図書館・読書空間を考える(シリーズ「図書館・文化・社会」1)』松籟社,2018年.
・相関図書館学方法論研究会(川崎良孝・吉田右子)編著『図書館と読書をめぐる理念と現実』(シリーズ「図書館・文化・社会」2)松籟社, 2019年.
・相関図書館学方法論研究会(川崎良孝・三浦太郎)編『時代のなかの図書館・読書文化』(シリーズ「図書館・文化・社会」3)松籟社, 2020年.
 
自学自習についての情報 ・各校種各教科の教科書に紹介されている本を調べ、利用可能な最寄りの図書館で読み、書誌(著者名,『書名』,出版社,出版年,ISBN)と内容をメモしたり、学習指導上の特に「読む」項目において学校図書館が寄与でき得る展開を模索する。
・教職課程で触れられている「学校図書館を活用した授業」について、また「調べ学習・課題解決型学習」のためのスキルについて再確認する。
・「日本国憲法」「教育基本法」「学校教育法」「学校図書館法」「学習指導要領」「図書館の自由に関する宣言」「子どもの読書活動の推進に関する法律」などに目を通す。
・文部科学省の学校図書館関連サイトや、子どもの読書推進に関するページを読む。
・各自の出身校(小・中・高等学校)のホームページがあれば拝見し、学校図書館や読書に関係した教育活動についてピックアップして、当該校の「教育目標」との関係性を確認する。
・国立国会図書館のレファレンス協同データベースのHPで、学校図書館における教員・児童生徒向けのレファレンスサービス事例を集め、教育現場での読書の特性について把握する。  
授業の形式 講義と演習 
アクティブラーニングに関する情報 時折、出席票と一体化したコメントシート記入を課し、授業の理解度を確認する。同時にシート上の質問・提案などを次回の授業に反映させ、意見交換をはかりながら双方向型の授業をめざす。また、グループワーク・ペアワーク・グループディスカッション・プレゼンテーション・セルフアセスメント・ピアアセスメント・PBL(2種)などを行い、主体的・対話的で深い学びを実現する。  
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) パフォーマン課題 (40%)
実技演習課題 (30%)
授業の参加修得状況(3分の2以上の出席必須)(30%)
 
その他(授業アンケートへのコメント含む) 自分自身のこれまでの学校生活も含めて、教育実習などの機会にも、「学校図書館」と「司書教諭」と「学校司書」について注目し、児童生徒の読書や学校図書館関連のニュースにアンテナをはっておいてください。
「司書」と「司書教諭」と「学校司書」の共通点・相違点や関係性について着目してください。(2014年に「学校司書」が法制化され、2015年は改正「学校図書館法」の施行年であったことから。)
自分が、教育現場で司書教諭の役割を担うことになったと仮定して、するべきことを想定してみてください。どのようにしたら教員・児童生徒の利益に結びつけられるかを考えてみてください。
 
担当講師についての情報(実務経験) 授業担当者は、教員・司書教諭・学校司書としての実務経験を有することから、豊富な事例に基づいて、受講生の理解度・習得度・実践能力の向上に資する授業を展開する。