科目名 |
解析学序論I |
クラス |
− |
授業の概要 |
本講義では解析学の基礎として実数の基本性質、極限の概念、連続関数などについて再確認し、1変数の微分と積分を学習する。高等学校では微分や積分の公式を用いて様々な計算ができるようになることを中心とした学習をしてきたが、本講義ではそれらの厳密な定義を理解することも重要な目的である。 |
授業の到達目標 |
・ε−N論法、ε−δ論法を用いて極限に関する証明ができる。 ・上限、下限に関する証明ができる。 ・微分係数・導関数の定義を理解し、基本的性質の証明ができる。 ・Riemann積分の定義を理解し、基本的な定積分の計算ができる。 ・原始関数と不定積分の違いに注意し、積分公式の証明ができる。 ・n次近似式の意味が説明でき、計算ができる。 ・各点収束と一様収束の違いが説明できる。 |
授業計画 |
回 |
内容 |
1 | 集合系の演算 |
2 | 実数の性質と上限・下限 |
3 | 実数の連続性・稠密性、 |
4 | ε−N論法による数列の極限 |
5 | 数列が収束するための条件、Cauchy列 |
6 | ε−δ論法による関数の極限 |
7 | 連続の定義と中間値の定理 |
8 | 指数関数、対数関数、三角関数、逆三角関数 |
9 | 微分係数・導関数の定義、関数の連続性と微分可能性 |
10 | 逆関数と合成関数の微分 |
11 | 平均値の定理、l'Hosptalの定理 |
12 | Riemann積分、Darbouxの定理、定積分に関する平均値の定理 |
13 | 原始関数と不定積分、微分積分学の基本定理 |
14 | 置換積分法、部分積分法 |
15 | 関数の展開、1次近似、2次近似、Taylorの定理 |
|
テキスト・参考書 |
テキスト ・理工系の微分積分学、吹田 信之-新保 経彦 共著、学術図書出版社、ISBN-13:978-4-87361-119-8
参考書 ・微分積分 (共立講座 21世紀の数学)、黒田 成俊 著、共立出版、ISBN-13:978-4-320-01553-1 ・位相入門−距離空間と位相空間−、鈴木 晋一 著、サイエンス社、ISBN-13:978-47819-1074-1 |
自学自習についての情報 |
講義内容についてよく復習すること。また、課題やレポートを利用して問題演習を行うこと。 |
授業の形式 |
講義と演習 |
アクティブラーニングに関する情報 |
講義内では演習の時間を多く取り、課題や小テストなどにより受講者の主体的な活動を図る。 |
評価の方法(評価の配点比率と評価の要点) |
試験(70%), 小テスト・発表・課題など平常点(30%)により評価する |
その他(授業アンケートへのコメント含む) |
解析学は極限操作によって新しい概念を獲得していく学問である。高等学校で学んできた極限の概念をε−N論法によって再構築し、これを元に微分積分学の基本定理を厳密に証明していく。よって、ε−N論法の理解は必要不可欠である。面積の概念の正しい理解は小学校からの様々な図形の面積指導で重要である。小学校算数では広さの概念、単位量がいくつ分という考え方から始まり、円の面積について、近似という概念を感覚的に学ぶことで公式を得る。Riemann積分の定義にも本質的に同じ視点が共有されており、小・中学校教員志望の学生にとっても重要である。数学において定義をはっきりさせておくことが非常に大切なこと、直感的に自明のように思える定理も丁寧に証明することに数学的に物事を捉える本質があること、数学の論理はきちんとした積み上げが必要なことを理解したい。ただし、その厳密さのなかにあっても事実を伝えるだけでなく、具体的なイメージを把握する過程にも重点を置く。この講義は2回生以上が対象である。 |
担当講師についての情報(実務経験) |
解析学を専門としており、高等専門学校、大学での勤務を経て、2023年に京都教育大学に赴任。 |